うっ血性心不全 生存率。 医療用医薬品 : シロスタゾール

急性心不全の症状や原因・治療・予防法は?若者も増加?

うっ血性心不全 生存率

うっ血性心不全とはどんな病気? うっ血性心不全とは、全身で血液が滞留し、肺その他にうっ血(鬱血)が生じた心不全です。 心不全とは、何らかの原因で心臓のポンプ機能が弱まり、全身に充分な量の血液を送り出せなくなった状態のことを言います。 心臓は、右心房(右房)、右心室(右室)、左心房(左房)、左心室(左室)の4つの部屋から成っています。 二酸化炭素を多く含んだ全身から帰ってくる血液(静脈血)は、まず右房に入り、次いで右室に入って、ここから肺動脈(心臓から肺に向かう血管)を通って肺に送り込まれます。 肺で二酸化炭素を排出し酸素をいっぱい取り込んだ血液(動脈血)は、肺静脈(肺から心臓に向かう血管)を通って左房に入り、次いで左室に入って、ここから大動脈に送り出され、全身を経めぐります (図1)。 これらの循環を維持するために、心室や心房は規則的に収縮・拡張を繰り返しているのですが、そのポンプ機能がうまく働かなくなった状態が心不全というわけです。 うっ血性心不全の死亡率・余命 厚生労働省の平成22年人口動態統計によれば、日本では、心臓疾患で亡くなる人は年間約20万人で、がんの約37万人に次ぐ死亡数です。 そのうちの約7万人が心不全による死亡です。 日本人の死因としては、肺がんと並ぶ最も多い死因と言えるでしょう。 65歳以上の人口の10%以上が心不全だと言われています。 予後は不良であることが多く、心不全と診断されてから5年で約半数の人が亡くなると考えられます。 うっ血性心不全と心不全の違い うっ血性心不全は、心不全という大きなくくりの中のひとつの病態です。 一般に、うっ血性心不全と言えば、慢性のうっ血性心不全状態を指します。 体内にナトリウムと水分が過剰に蓄積され、四肢などにむくみ(浮腫)が現われます。 体がさまざまな代償機構を働かせて血圧を維持しようとするので、かえって心臓への負担が増し、次第次第に心不全を悪化させてしまいます。 一方、急性心筋梗塞などが原因で発症する急性うっ血性心不全では、体内にナトリウムと水分が一定以上蓄積される前に、肺にうっ血が生じるなど、急激にさまざまな症状が現われます。 左室から送り出される血液の量が著しく低下して血圧が維持できなくなり、ショックに至ることがあります。 心不全には、潜在性心不全という、安静時には心不全の症状がなく、階段を上るといった心臓に負荷のかかる行動をとったときに症状が出る心不全もあります。 肺の疾患(肺高血圧症、肺血栓塞栓症、肺性心など)が原因となって心不全の症状が出る心不全もあります。 左心不全と右心不全 左[さ]心不全・右[う]心不全というのは、心不全状態の原因が、主に左室や左房(これらをまとめて左心系[さしんけい]と言います)にあるのか、右房や右室(これらをまとめて右心系[うしんけい]と言います)にあるのかという観点に立った分類です。 左心不全では、大動脈に送り出しきれなかった動脈血が左心系にうっ滞し、そのため血流の上流に当たる肺にも影響が出て、肺でうっ血が生じたり(肺うっ血)、水が溜まったり(肺水腫)します。 つまり、左心不全の特徴は、肺循環系のうっ血にあります。 一方、右心不全では、肺に送り出しきれなかった静脈血が右心系にうっ滞し、全身からの静脈血の心臓への還流を滞らせます。 そのため、手足がむくんだり、肝臓が腫れたり(肝腫大)、腹水が溜まったり、頸静脈が怒張したりします。 つまり、右心不全の特徴は、体循環系のうっ血にあります (図2)。 図2 左心不全の状態が続くと、右心系にも負荷がかかり、右心不全を合併することがあります。 左心不全による肺への負荷が、肺動脈(右室から肺に静脈血を送る血管)の圧の上昇に繋がり(この状態を肺高血圧症と言います)、それが右心系にかかる圧の増大を呼んで、右心不全を引き起こすわけです。 原因 うっ血性心不全の原因には、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患(虚血性とは、血液が不足した状態のことです)、高血圧、弁膜症、心筋症、心筋炎、先天性心疾患、不整脈などがあります。 虚血性心疾患 糖尿病や高血圧、脂質異常症、肥満などがあると動脈硬化が進行し、血管が硬くなったり、血管の内側にコレステロールの塊(プラークと言います)ができたりします。 この動脈硬化が心筋(心臓の筋肉)に酸素や栄養分を送る冠動脈(心臓の表面を走る動脈)にできると、冠動脈が狭まったり(狭心症)、詰まったり(心筋梗塞)して、血液がちゃんと流れなくなり、心筋が弱ったり死んだりして、心臓のポンプ機能を低下させます。 急性心筋梗塞が起こると、急性うっ血性心不全を引き起こします。 高血圧性心疾患 高血圧症の人の血管には常に高い圧力がかかるので、それに耐えるために血管の壁が厚く硬くなりますが、そうなると心臓は、より強い力で血液を押し出さなければならなくなります。 この状態が続くと心筋が厚くなって、伸び縮みしづらくなり、その結果、全身から戻る血液も、全身へ送り出す血液も、少なくなってしまいます。 弁膜症 弁膜症とは、心臓の弁が損なわれる病気です。 僧帽弁(左房と左室の間の弁)や大動脈弁(左室と大動脈の間の弁)などが、ちゃんと開かなくなると血液が流れにくくなり(狭窄症)、閉じなくなると血液の逆流が生じ(閉鎖不全症)、心室・心房にダメージを与えます。 心筋症 心筋症とは、心筋に異常が生じ、その結果、心臓のポンプ機能が阻害される病気です。 代表的なものに、拡張型心筋症(左室の心腔が拡張したもの)や肥大型心筋症(左室の心筋が肥大したもの)があります。 心筋炎 心筋炎とは、心筋の炎症性疾患です。 ウイルスなどが心臓の中に侵入し、炎症を引き起こします。 先天性心疾患 心房中隔欠損症(左右の心房を隔てる壁に穴が空いている状態)などの先天性(生まれつきの)心疾患が、心不全を引き起こすこともあります。 不整脈 頻脈発作をきたすような不整脈(規則的でない脈)が持続すると、心筋が常に活発に働かざるをえなくなり、やがて疲労してうっ血性心不全を発症します。 肺疾患 肺高血圧症、肺血栓塞栓症(血栓が肺動脈を塞ぎ肺循環を阻害するもの)、肺性心(肺でのガス交換が阻害され肺高血圧をきたすもの)などの肺疾患も、心不全を呼びます。 薬剤性 抗不整脈薬やベータ遮断薬は、状況によってはうっ血性心不全の原因ともなります。 抗がん剤なども、種類によってはうっ血性心不全を引き起こします。 症状 うっ血性心不全では、全身の臓器や血管で血液の滞留(うっ血)が起こって、体液量が増加し、尿の量が減ります。 そのため、体重が急激に増加し、下肢などにむくみ(浮腫)が現われます。 また、肺に水が溜まるため(肺水腫)、息切れや呼吸困難、倦怠感などが生じます。 肺での酸素の取り込みを阻害するだけでなく、肺を膨らみにくくするからです。 このため、階段や坂道を上っていて息が切れたり、咳や痰が出たり、動悸がしたりします。 心不全の初期では、夜間に小水に起きるようになります(夜間多尿)。 日中、全身に分布していた血液が、夜、横になると体幹に戻り、腎臓の血流が増加するため、就寝後の尿量が増えるからです。 重症化すると、就寝時に息苦しくなったり(夜間発作性呼吸困難)、体を横(水平)にしていると呼吸が苦しいのに上半身を起こすと楽になる起座[きざ]呼吸という症状が現われたりします。 なぜ寝ている姿勢より起きている姿勢のほうが呼吸が楽なのかというと、体を横(水平)にすると、下半身に行っていた血液が急に心臓に戻り、肺うっ血が強まるからです。 重症の人では、激しく咳込んだり、ピンク色の痰が出たりします。 胸が痛むこともあり、胸痛が出てから、狭心症ではないかと疑って受診する人もいます。 肺炎とよく間違えられることもあります。 重症度の評価 うっ血性心不全の重症度の分類には、身体所見に基づいたNYHA(ニーハ:New York Heart Association:ニューヨーク心臓協会)作成のものが広く用いられています。 日常的な身体活動では、著しい疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じない。 日常的な身体活動で疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じる。 通常以下の身体活動で疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じる。 安静時にも心不全症状や狭心痛があり、わずかな労作でこれらの症状が増悪する。 検査方法 うっ血性心不全の検査としては、血液検査、胸部レントゲン検査、心電図、心エコー検査などが行なわれますが、詳細な原因解明には心臓カテーテル検査が必要です。 血液検査 原因疾患が何であるのかを探るのに血液検査は役立ちますが、中でもBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)というホルモンの血中濃度の測定は、うっ血性心不全の検査に有用です。 BNPは主に心室から分泌され、心筋を保護する働きをしています。 心臓に負担がかかったり、心筋が肥大したりすると血中濃度が増します。 自覚症状が出る前から濃度が上がるので、心機能低下の早期発見に役立ちます。 胸部レントゲン検査 X線を当てて心臓の画像を得る検査です。 心臓が大きくなっていないか、肺に血液が滞っていないか、胸水がないか、などが確認できます。 心電図 心電図とは、被験者の胸等に電極を付け、心臓の電気的な活動をグラフの形に記録するものです。 急性心筋梗塞や不整脈などを診断します。 心エコー検査 心エコー検査とは、超音波(エコー)という人の耳には聞こえない高い周波数の音波を使って心臓の状態を探るものです。 ベッドサイドで体に負担をかけず簡便に行なうことができ、心臓の動きをタイムリーに観察できます。 心臓の肥大や拡大の有無を見たり、急性心筋梗塞や弁膜症などがないか調べたり、下大静脈(右房に静脈血を戻す血管)の張りからうっ血具合を観察したりします。 心臓カテーテル検査 頸静脈などから入れたカテーテル(細い管)を、右心系を経由して肺動脈にまで挿入して行なう検査で、心拍出量、右房圧、肺動脈圧、肺動脈楔入[せつにゅう]圧(肺動脈枝をバルーン〈風船〉で膨らませたときの圧。 左房圧として扱える)など、より正確な血行動態指標が得られます。 心筋生検も同時に行なえます (図3)。 図3 その他、必要に応じて冠動脈造影、運動負荷検査、CT検査、MRI検査、核医学検査などが行なわれることがあります。 治療(手術)方法 原因となっている疾患に対する治療 心不全の症状自体の改善には薬物治療や非薬物治療が用いられますが、それと同時に、原因となっている疾患に対する治療も行なわれます。 たとえば、急性心筋梗塞が原因であれば、冠動脈の閉塞状況を改善するために、カテーテル治療(カテーテルを利用して血管内にバルーン〈風船〉やステントを留置する治療)やバイパス手術(閉塞箇所を迂回する血行路を作る治療)を検討し、心臓弁膜症が原因なら、弁の不良を改善するために、弁置換術(弁の取り換え)や弁形成術(弁の修復)などの手術を検討します。 体内の水分量を減らす利尿剤も併用します。 徐脈(脈拍が遅い状態)でなければ、交感神経の働きを抑えるベータ遮断薬も有効です。 ベータ遮断薬は、心臓を働かせようとする交感神経からの信号をブロックしてくれます。 うっ血性心不全の治療は、1980年代に入って大きく変わりました。 それまでは、強心薬(ジギタリス)を用いてポンプ機能を強め、利尿薬によって負荷を軽くする、というやり方でした。 しかしこの方法では、一時的には症状が改善されるものの、予後を延長できないことが分かり、血管を拡張する薬とベータ遮断薬を併用する方法に変わりました。 強心薬で心臓を鞭打つよりも心臓を休めるほうが、予後がいいと分かったわけです。 非薬物療法 一般に、薬物療法が充分な効果を上げない場合、非薬物療法が検討されます。 CRTの原理は次のようなものです。 正常な状態では、右室と左室と両室を隔てる中隔は同時に収縮するのですが、左脚ブロックが起こると、それらが時機のばらつく協調性のない収縮をし、送り出す血液量がさらに低下します。 そこで、右室と左室の側壁に、冠状静脈(心臓の表面を走る静脈)を経由して左室を挟み込むようにリードを留置し、電気信号を同時に流して拍動が同期するようにするのです(これを両室同期ペーシングと言います) (図4)。 こうすると、拡張期には、拡張気圧が上昇することで冠動脈への血流が増加して心筋への酸素の供給が増え、収縮期には、バルーンに吸引される形となって左室からの血液の送り出しが楽になります (図5)。 図5 PCPS(経皮的心肺補助法) 大腿動脈と大腿静脈のそれぞれに、経皮的に(体の表面から)送血・脱血カテーテルを挿入し、人工心肺装置で血液を体外循環させる方法です。 カテーテルを大腿静脈から右房まで挿入して抜いた血を、人工肺で酸素化し、遠心ポンプで大腿動脈に送り込みます。 (図6) 図6 VAD(補助人工心臓) IABPやPCPSなどの補助循環治療を行なっても効果のない重症患者で、心臓移植の適応がある人の場合は、移植までのつなぎとして補助人工心臓を使います。 体外型と植込型があります。 日本では、移植後の5年生存率は91%、10年生存率は89%です。 食事療法 うっ血性心不全では、食事制限が重要です。 特に塩分の制限が求められます。 塩分を摂りすぎると体内の血液量が増え、心臓に負担をかけることになるからです。 摂取は1日6グラム以下に抑えましょう。 肥満により心臓に負担のかかっている人は、カロリーの制限が求められます。 動物性脂をなるべく避け、植物性脂を摂るようにしましょう。 過剰な水分の摂取も控えましょう。 コーヒーなどの刺激物や大量飲酒も避け、禁煙しましょう。 また、運動不足や肥満はリスク要因です。 過度の運動は心不全を悪化させますが、過剰な運動制限も循環調節力を衰えさせます。 状態に合わせた運動を行ないましょう。 1日に20~30分程度の有酸素運動(ウォーキングなどの息の切れない軽い運動)が望まれます。

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循環器疾患

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その機序としては,心拍数,収縮期容積,拡張期容積,一回拍出量,および組織の酸素抽出量(動脈血と混合静脈血または肺動脈血との酸素含量の差)の増加などがある。 この機序は,心不全で組織血流量が低下した場合の代償にも役立つ。 心不全では,心臓が代謝要求に十分な量の血液を組織に供給できなくなり,心臓の変化に関連して肺または全身静脈圧が上昇する結果,臓器うっ血を来すことがある。 この状態は,収縮機能,拡張機能,あるいは一般的には両機能に異常を来した結果として発生する。 主要な異常としては心筋機能の変化が考えられるが,細胞外基質のコラーゲンの代謝回転にも変化が生じている可能性がある。 心臓の構造的欠損(例,先天的欠損,弁膜症),調律異常(持続的な心拍数高値も含む),および代謝要求の亢進(例,甲状腺中毒症に起因するもの)も心不全の原因となりうる。 駆出率が低下した心不全(heart failure with reduced ejection fraction:HFrEF) 心不全の原因としての拡張機能障害に対する認識が高まってきている。 推定結果は一定でないが,心不全患者の約50%はHFpEFであり,その有病率は加齢と糖尿病患者で高くなる。 HFpEFは現在では,しばしば複数の病態生理が同時多発的に生じる,多臓器の異常による複雑かつ不均一な全身性の症候群であることが知られている。 最新のデータによると,様々な併存症(例,, ,,)により全身性の炎症,広範な内皮機能障害,および心臓微小血管の機能障害が生じ,最終的には心臓の分子レベルの変化によって心筋線維化や心室硬化が増加する可能性が示唆されている。 したがって,HFrEFは典型的には一次性の心筋損傷に関連した病態であるが,HFpEFは末梢で生じた異常による二次性の心筋損傷に関連している場合がある。 左室不全 左室機能障害に起因する心不全では,心拍出量が減少し,肺静脈圧が上昇する。 肺毛細血管圧が血漿タンパクの膠質浸透圧(約24mmHg)を上回ると,体液が毛細血管から間質および肺胞へと漏出し,肺のコンプライアンスが低下し,呼吸仕事量が増大する。 リンパ管からの排出が増加するが,胸水の増加を代償することはできない。 右室機能障害に起因する心不全では,全身静脈圧が上昇し,主に各体位で下方にある組織(歩行可能な患者では足や足関節)や腹腔内臓器に体液が漏出して浮腫を来す。 肝臓への影響が最も大きいが,胃や腸管にもうっ血が生じるほか,腹腔への液貯留(腹水)が起こることがある。 肝障害により アルドステロン分解能が低下する結果,体液貯留がさらに亢進する。 内臓における慢性静脈うっ滞は,食欲不振,栄養および薬物の吸収不良,タンパク漏出性胃腸症(下痢および著明な低アルブミン血症を特徴とする),消化管の慢性出血,まれに虚血による腸梗塞を引き起こす可能性がある。 心臓の反応 HFrEFでは,左室収縮機能が著しく損なわれるため,心拍出量を維持するためにより大きな前負荷が必要となる。 その結果,時間の経過とともに両心室でリモデリングが生じる:左室は卵円形から球形となり,拡大して肥大し,右室は拡大し,肥大する場合もある。 これらの変化は初期には代償性であるが,最終的には拡張期のスティフネスおよび壁張力を増強させ(すなわち拡張機能障害が発生する),これにより一回拍出量が減少し,特に身体的ストレスが生じた際に著明となる。 壁応力の上昇により,酸素需要が増大し,心筋細胞のアポトーシス(プログラム細胞死)が加速する。 心室の拡大により(弁輪が拡大するために)僧帽弁または三尖弁逆流が生じる可能性もあり,その場合は拡張末期容積がさらに増大する。 血行動態の反応 レニン-アンジオテンシン-アルドステロン- バソプレシン(抗利尿ホルモン[ADH])系は,有害となりうる一連の長期的影響を誘導する。 アンジオテンシンIIは,腎臓の輸出細動脈を含めた血管収縮を引き起こし,アルドステロンの産生を増加させることにより心不全を悪化させ,これは遠位ネフロンでのナトリウム再吸収を促進し,心筋および血管のコラーゲン沈着や線維化も引き起こす。 アンジオテンシンIIは ノルアドレナリンの分泌を促進し, バソプレシンの分泌を刺激し,アポトーシスの引き金となる。 アンジオテンシンIIは血管および心筋の肥大に関与していると考えられ,そのため心臓および末梢血管構造のリモデリングに寄与し,心不全を悪化させる可能性がある。 アルドステロンは,心臓および血管系においてアンジオテンシンIIとは独立して合成されることあり(おそらくコルチコトロピン,一酸化窒素,フリーラジカル,その他の刺激が介在する),これらの臓器に悪影響を及ぼす可能性がある。 臨床像は,最初に右室および左室がどの程度の影響を受けたかに依存する。 臨床的な重症度には大きなばらつきがあり,通常はNew York Heart Association(NYHA)分類( )に従って分類されるが,高齢の衰弱した患者では通常の活動の例を修正することがある。 心不全の重症度には大きな幅があるため,NYHA分類のクラスIIIをさらにIIIAとIIIBに細分することも提唱されている。 クラスIIIBは,典型的には最近心不全が増悪した患者に適用される。 左室不全で最もよくみられる症状は,肺静脈圧の上昇と心拍出量の低下(安静時の低下または労作時の心拍出量の増大不良)による呼吸困難と疲労である。 呼吸困難は通常労作中にみられ,安静により緩和される。 心不全が増悪すると,呼吸困難が安静時や夜間にもみられるようになり,ときに夜間咳嗽も生じる。 心不全が進行した患者では,臥位を取った直後に発生し,座位により速やかに軽減する呼吸困難(起座呼吸)がよくみられる。 発作性夜間呼吸困難(PND)では,就寝後数時間で呼吸困難が発生して患者を覚醒させ,座位を15~20分間維持するまで緩和されない。 PNDでは過呼吸相が短く10~15秒しか持続しないのと異なり,チェーン-ストークス呼吸では,サイクルが一定の頻度で繰り返され,1回につき30秒から2分間にわたり持続する。 PNDには肺うっ血が,チェーン-ストークス呼吸には心拍出量低下が関連する。 心不全では,などの睡眠時呼吸障害が一般的にみられ,心不全を増悪させることがある。 重度の脳血流量の低下と低酸素血症により,慢性の易刺激性が生じ,精神機能が障害されることがある。 右室不全の徴候には,圧痛を伴わない足部および足関節の圧痕性浮腫(指で押すと明瞭で触知可能な痕跡が残り,ときにかなり深くなる),右肋骨下縁の触知可能でときに拍動性の肝腫大,腹部の腫脹および腹水,視認可能な頸静脈圧の上昇(ときに座位または立位でも視認できる大きな a波または v波を伴う)などがある( )。 頸静脈における大きなV波は通常,右室不全でしばしばみられる有意な三尖弁逆流を示唆する。 吸気時に頸静脈圧がかえって上昇する現象(クスマウル徴候)は,右心不全を示唆する徴候であり,右室不全,拘束型心筋症,収縮性心膜炎,および重度の三尖弁逆流症でみられることがある。 心不全の重症例では,末梢浮腫が大腿部,さらには仙骨部,陰嚢,下腹部の腹壁にも認められ,ときにより上方に拡がることもある。 複数の領域に発生する重度の浮腫は全身浮腫(anasarca)と呼ばれる。 患者が左右どちらの側臥位をとることが多くなると,浮腫は非対称性となりうる。 は,心腔径,弁膜機能,左室駆出率,壁運動異常,左室肥大,拡張機能,肺動脈圧,左室および右室充満圧,右室機能,ならびに心嚢液貯留の評価に役立つ。 心臓内血栓,腫瘍,および石灰化が心臓弁,僧帽弁輪,大動脈壁の異常部位などに検出される可能性がある。 局所または分節レベルの壁運動異常は基礎疾患としての冠動脈疾患の存在を強く示唆するが,斑状の心筋炎でも認めることがある。 ドプラまたはカラードプラ心エコー検査では,弁膜症や短絡を正確に検出できる。 ドプラ法による僧帽弁流入量の評価と僧帽弁輪の組織ドプラ画像を組み合わせることで,左室拡張機能障害の同定と左室充満圧の定量化に役立てることができる。 40)を鑑別できる。 重要であるため,心不全は左室駆出率が正常でも発生するということを改めて強調しておく。 スペックルトラッキング法による心エコー検査(無症状の収縮機能障害や特定パターンの心筋機能障害の検出に有用である)は,重要となる場合もあるが,現時点では専門の医療機関でしか行えない。 心不全では,しばしば 血清BNP濃度が高値となるが,この所見は,臨床所見が不明瞭な場合や他の診断(例,COPD)を除外する必要がある場合に有用となりうる。 特に,肺疾患の既往と心疾患の既往を両方有する患者で有用となりやすい。 NT-pro-BNPは,pro BNPが分断された際に生成される不活性成分であり,BNPと同様に利用することができる。 しかし,BNP濃度が正常でも心不全を除外することはできない。 肥満は,心不全の併存症として多くみられるようになってきているが,BNP産生の減少とBNPクリアランスの増加を伴う。 心不全でよくみられる代償性変化である洞頻拍は,心不全治療が奏効すると通常は消失する。 洞頻拍が消失しない場合は,関連する原因(例,甲状腺機能亢進症,肺塞栓症,発熱,貧血,疼痛)を検索すべきである。 洞調律への是正とその維持をルーチンに試みる方針については,レートコントロール単独よりも優れているとした大規模臨床試験の結果は得られていない。 しかしながら,一部の患者は正常洞調律の回復により著しく状態が改善するため,この判断はケースバイケースで下すのが最善である。 頻拍性心房細動が薬物治療に反応しない場合は,洞調律または規則的なリズムを回復させるため,一定の条件を満たす患者に対して,房室結節の完全もしくは部分的なアブレーションまたはその他のを併用する恒久型ペースメーカーの植込みを考慮してもよい。 原因(例,カリウムまたはマグネシウム低値,虚血)の是正と心不全に対する至適な薬物治療にもかかわらず,持続性が遷延する場合は,抗不整脈薬が必要である可能性がある。 血清ジゴキシン濃度とINR値をルーチンにモニタリングすべきである。 ただし,たとえ治療濃度でも薬物毒性が生じる可能性がある。 アミオダロンの長期使用は有害作用の発生につながる可能性があるため,可能であれば低用量(200mg,経口,1日1回)で使用し,肝機能および甲状腺刺激ホルモンの血液検査を6カ月毎に施行する。 胸部X線で異常がみられるか,呼吸困難が有意に増悪する場合は,胸部X線および肺機能検査を年1回施行して肺の線維化が生じていないか確認する。 持続的な心室性不整脈にはアミオダロンが必要となる場合があり,突然死のリスクを低減するために,負荷量400~800mgの1日2回経口投与を1~3週間にわたりリズムが十分にコントロールされるまで継続し,その後は1カ月かけて維持量の200mg,経口,1日1回まで減量する。 医療機器を用いる治療 侵襲的な血行動態モニタリング(例,肺動脈圧)を遠隔で行う植込み型の機器は,高度に選択された患者において心不全管理の指針となりうる。 例えば,そのような機器の測定値に基づく薬剤(例,利尿薬)の用量調節について,HFrEFとHFpEF両方の患者を対象とした臨床試験で心不全による入院期間の大幅な短縮との関連が認められた。 この種の機器では,心不全患者における肺毛細血管楔入圧(とそれに基づく左房圧)の代替指標として肺動脈拡張期圧を用いる。 ただし,評価は心不全の増悪を繰り返したNYHAクラスIIIの患者のみを対象として行われた。 今後のさらなるエビデンスが,この技術をどのように導入すべきかの指針になると考えられる。 治療後もしばしば症状が持続する。 また,他の疾患の治療に使用された薬剤が心不全治療に影響を及ぼしている可能性もある。 NSAID,糖尿病に対するチアゾリジン系薬剤(例,ピオグリタゾン),および短時間作用型のジヒドロピリジン系または非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬は,心不全を増悪させる可能性があるため,他に代替薬が存在しない場合には回避すべきであり,これらの薬剤を服用しなければならない患者には,綿密なフォローアップを行うべきである。 治療に関する参考文献 1. Circulation 134 13 :e282—293, 2016. , Inc. , Kenilworth, N. , U. Aは、米国とカナダ以外の国と地域ではMSDとして知られる、すこやかな世界の実現を目指して努力を続ける、グローバルヘルスケアリーダーです。 病気の新たな治療法や予防法の開発から、助けの必要な人々の支援まで、世界中の人々の健康や福祉の向上に取り組んでいます。 このマニュアルは社会へのサービスとして1899年に創刊されました。 古くからのこの重要な資産は米国、カナダではMerck Manual、その他の国と地域ではMSD Manualとして引き継がれています。 私たちのコミットメントの詳細は、をご覧ください。 必ずお読みください:本マニュアルの執筆者、レビュアー、編集者は、記載されている治療法、薬剤、診療に関する考察が正確であること、また公開時に一般的とされる基準に準拠していることを入念に確認する作業を実施しています。 しかしながら、その後の研究や臨床経験の蓄積による日々の情報変化、専門家の間の一定の見解の相違、個々の臨床における状況の違い、または膨大な文章の作成時における人為的ミスの可能性等により、他の情報源による医学情報と本マニュアルの情報が異なることがあります。 本マニュアルの情報は専門家としての助言を意図したものではなく、医師、薬剤師、その他の医療従事者への相談に代わるものではありません。 ご利用の皆様は、本マニュアルの情報を理由に専門家の医学的な助言を軽視したり、助言の入手を遅らせたりすることがないようご注意ください。 本マニュアルの内容は米国の医療行為や情報を反映しています。 米国以外の国では、臨床ガイドライン、診療基準、専門家の意見が異なる場合もありますので、ご利用の際にはご自身の国の医療情報源も併せて参照されるようお願い致します。 また、英語で提供されているすべての情報が、すべての言語で提供されているとは限りませんので、ご注意ください。

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心不全の予後はどうでしょうか。重要度や、基礎疾患にもよると思いますが...

うっ血性心不全 生存率

うっ血性心不全とはどんな病気? うっ血性心不全とは、全身で血液が滞留し、肺その他にうっ血(鬱血)が生じた心不全です。 心不全とは、何らかの原因で心臓のポンプ機能が弱まり、全身に充分な量の血液を送り出せなくなった状態のことを言います。 心臓は、右心房(右房)、右心室(右室)、左心房(左房)、左心室(左室)の4つの部屋から成っています。 二酸化炭素を多く含んだ全身から帰ってくる血液(静脈血)は、まず右房に入り、次いで右室に入って、ここから肺動脈(心臓から肺に向かう血管)を通って肺に送り込まれます。 肺で二酸化炭素を排出し酸素をいっぱい取り込んだ血液(動脈血)は、肺静脈(肺から心臓に向かう血管)を通って左房に入り、次いで左室に入って、ここから大動脈に送り出され、全身を経めぐります (図1)。 これらの循環を維持するために、心室や心房は規則的に収縮・拡張を繰り返しているのですが、そのポンプ機能がうまく働かなくなった状態が心不全というわけです。 うっ血性心不全の死亡率・余命 厚生労働省の平成22年人口動態統計によれば、日本では、心臓疾患で亡くなる人は年間約20万人で、がんの約37万人に次ぐ死亡数です。 そのうちの約7万人が心不全による死亡です。 日本人の死因としては、肺がんと並ぶ最も多い死因と言えるでしょう。 65歳以上の人口の10%以上が心不全だと言われています。 予後は不良であることが多く、心不全と診断されてから5年で約半数の人が亡くなると考えられます。 うっ血性心不全と心不全の違い うっ血性心不全は、心不全という大きなくくりの中のひとつの病態です。 一般に、うっ血性心不全と言えば、慢性のうっ血性心不全状態を指します。 体内にナトリウムと水分が過剰に蓄積され、四肢などにむくみ(浮腫)が現われます。 体がさまざまな代償機構を働かせて血圧を維持しようとするので、かえって心臓への負担が増し、次第次第に心不全を悪化させてしまいます。 一方、急性心筋梗塞などが原因で発症する急性うっ血性心不全では、体内にナトリウムと水分が一定以上蓄積される前に、肺にうっ血が生じるなど、急激にさまざまな症状が現われます。 左室から送り出される血液の量が著しく低下して血圧が維持できなくなり、ショックに至ることがあります。 心不全には、潜在性心不全という、安静時には心不全の症状がなく、階段を上るといった心臓に負荷のかかる行動をとったときに症状が出る心不全もあります。 肺の疾患(肺高血圧症、肺血栓塞栓症、肺性心など)が原因となって心不全の症状が出る心不全もあります。 左心不全と右心不全 左[さ]心不全・右[う]心不全というのは、心不全状態の原因が、主に左室や左房(これらをまとめて左心系[さしんけい]と言います)にあるのか、右房や右室(これらをまとめて右心系[うしんけい]と言います)にあるのかという観点に立った分類です。 左心不全では、大動脈に送り出しきれなかった動脈血が左心系にうっ滞し、そのため血流の上流に当たる肺にも影響が出て、肺でうっ血が生じたり(肺うっ血)、水が溜まったり(肺水腫)します。 つまり、左心不全の特徴は、肺循環系のうっ血にあります。 一方、右心不全では、肺に送り出しきれなかった静脈血が右心系にうっ滞し、全身からの静脈血の心臓への還流を滞らせます。 そのため、手足がむくんだり、肝臓が腫れたり(肝腫大)、腹水が溜まったり、頸静脈が怒張したりします。 つまり、右心不全の特徴は、体循環系のうっ血にあります (図2)。 図2 左心不全の状態が続くと、右心系にも負荷がかかり、右心不全を合併することがあります。 左心不全による肺への負荷が、肺動脈(右室から肺に静脈血を送る血管)の圧の上昇に繋がり(この状態を肺高血圧症と言います)、それが右心系にかかる圧の増大を呼んで、右心不全を引き起こすわけです。 原因 うっ血性心不全の原因には、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患(虚血性とは、血液が不足した状態のことです)、高血圧、弁膜症、心筋症、心筋炎、先天性心疾患、不整脈などがあります。 虚血性心疾患 糖尿病や高血圧、脂質異常症、肥満などがあると動脈硬化が進行し、血管が硬くなったり、血管の内側にコレステロールの塊(プラークと言います)ができたりします。 この動脈硬化が心筋(心臓の筋肉)に酸素や栄養分を送る冠動脈(心臓の表面を走る動脈)にできると、冠動脈が狭まったり(狭心症)、詰まったり(心筋梗塞)して、血液がちゃんと流れなくなり、心筋が弱ったり死んだりして、心臓のポンプ機能を低下させます。 急性心筋梗塞が起こると、急性うっ血性心不全を引き起こします。 高血圧性心疾患 高血圧症の人の血管には常に高い圧力がかかるので、それに耐えるために血管の壁が厚く硬くなりますが、そうなると心臓は、より強い力で血液を押し出さなければならなくなります。 この状態が続くと心筋が厚くなって、伸び縮みしづらくなり、その結果、全身から戻る血液も、全身へ送り出す血液も、少なくなってしまいます。 弁膜症 弁膜症とは、心臓の弁が損なわれる病気です。 僧帽弁(左房と左室の間の弁)や大動脈弁(左室と大動脈の間の弁)などが、ちゃんと開かなくなると血液が流れにくくなり(狭窄症)、閉じなくなると血液の逆流が生じ(閉鎖不全症)、心室・心房にダメージを与えます。 心筋症 心筋症とは、心筋に異常が生じ、その結果、心臓のポンプ機能が阻害される病気です。 代表的なものに、拡張型心筋症(左室の心腔が拡張したもの)や肥大型心筋症(左室の心筋が肥大したもの)があります。 心筋炎 心筋炎とは、心筋の炎症性疾患です。 ウイルスなどが心臓の中に侵入し、炎症を引き起こします。 先天性心疾患 心房中隔欠損症(左右の心房を隔てる壁に穴が空いている状態)などの先天性(生まれつきの)心疾患が、心不全を引き起こすこともあります。 不整脈 頻脈発作をきたすような不整脈(規則的でない脈)が持続すると、心筋が常に活発に働かざるをえなくなり、やがて疲労してうっ血性心不全を発症します。 肺疾患 肺高血圧症、肺血栓塞栓症(血栓が肺動脈を塞ぎ肺循環を阻害するもの)、肺性心(肺でのガス交換が阻害され肺高血圧をきたすもの)などの肺疾患も、心不全を呼びます。 薬剤性 抗不整脈薬やベータ遮断薬は、状況によってはうっ血性心不全の原因ともなります。 抗がん剤なども、種類によってはうっ血性心不全を引き起こします。 症状 うっ血性心不全では、全身の臓器や血管で血液の滞留(うっ血)が起こって、体液量が増加し、尿の量が減ります。 そのため、体重が急激に増加し、下肢などにむくみ(浮腫)が現われます。 また、肺に水が溜まるため(肺水腫)、息切れや呼吸困難、倦怠感などが生じます。 肺での酸素の取り込みを阻害するだけでなく、肺を膨らみにくくするからです。 このため、階段や坂道を上っていて息が切れたり、咳や痰が出たり、動悸がしたりします。 心不全の初期では、夜間に小水に起きるようになります(夜間多尿)。 日中、全身に分布していた血液が、夜、横になると体幹に戻り、腎臓の血流が増加するため、就寝後の尿量が増えるからです。 重症化すると、就寝時に息苦しくなったり(夜間発作性呼吸困難)、体を横(水平)にしていると呼吸が苦しいのに上半身を起こすと楽になる起座[きざ]呼吸という症状が現われたりします。 なぜ寝ている姿勢より起きている姿勢のほうが呼吸が楽なのかというと、体を横(水平)にすると、下半身に行っていた血液が急に心臓に戻り、肺うっ血が強まるからです。 重症の人では、激しく咳込んだり、ピンク色の痰が出たりします。 胸が痛むこともあり、胸痛が出てから、狭心症ではないかと疑って受診する人もいます。 肺炎とよく間違えられることもあります。 重症度の評価 うっ血性心不全の重症度の分類には、身体所見に基づいたNYHA(ニーハ:New York Heart Association:ニューヨーク心臓協会)作成のものが広く用いられています。 日常的な身体活動では、著しい疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じない。 日常的な身体活動で疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じる。 通常以下の身体活動で疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じる。 安静時にも心不全症状や狭心痛があり、わずかな労作でこれらの症状が増悪する。 検査方法 うっ血性心不全の検査としては、血液検査、胸部レントゲン検査、心電図、心エコー検査などが行なわれますが、詳細な原因解明には心臓カテーテル検査が必要です。 血液検査 原因疾患が何であるのかを探るのに血液検査は役立ちますが、中でもBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)というホルモンの血中濃度の測定は、うっ血性心不全の検査に有用です。 BNPは主に心室から分泌され、心筋を保護する働きをしています。 心臓に負担がかかったり、心筋が肥大したりすると血中濃度が増します。 自覚症状が出る前から濃度が上がるので、心機能低下の早期発見に役立ちます。 胸部レントゲン検査 X線を当てて心臓の画像を得る検査です。 心臓が大きくなっていないか、肺に血液が滞っていないか、胸水がないか、などが確認できます。 心電図 心電図とは、被験者の胸等に電極を付け、心臓の電気的な活動をグラフの形に記録するものです。 急性心筋梗塞や不整脈などを診断します。 心エコー検査 心エコー検査とは、超音波(エコー)という人の耳には聞こえない高い周波数の音波を使って心臓の状態を探るものです。 ベッドサイドで体に負担をかけず簡便に行なうことができ、心臓の動きをタイムリーに観察できます。 心臓の肥大や拡大の有無を見たり、急性心筋梗塞や弁膜症などがないか調べたり、下大静脈(右房に静脈血を戻す血管)の張りからうっ血具合を観察したりします。 心臓カテーテル検査 頸静脈などから入れたカテーテル(細い管)を、右心系を経由して肺動脈にまで挿入して行なう検査で、心拍出量、右房圧、肺動脈圧、肺動脈楔入[せつにゅう]圧(肺動脈枝をバルーン〈風船〉で膨らませたときの圧。 左房圧として扱える)など、より正確な血行動態指標が得られます。 心筋生検も同時に行なえます (図3)。 図3 その他、必要に応じて冠動脈造影、運動負荷検査、CT検査、MRI検査、核医学検査などが行なわれることがあります。 治療(手術)方法 原因となっている疾患に対する治療 心不全の症状自体の改善には薬物治療や非薬物治療が用いられますが、それと同時に、原因となっている疾患に対する治療も行なわれます。 たとえば、急性心筋梗塞が原因であれば、冠動脈の閉塞状況を改善するために、カテーテル治療(カテーテルを利用して血管内にバルーン〈風船〉やステントを留置する治療)やバイパス手術(閉塞箇所を迂回する血行路を作る治療)を検討し、心臓弁膜症が原因なら、弁の不良を改善するために、弁置換術(弁の取り換え)や弁形成術(弁の修復)などの手術を検討します。 体内の水分量を減らす利尿剤も併用します。 徐脈(脈拍が遅い状態)でなければ、交感神経の働きを抑えるベータ遮断薬も有効です。 ベータ遮断薬は、心臓を働かせようとする交感神経からの信号をブロックしてくれます。 うっ血性心不全の治療は、1980年代に入って大きく変わりました。 それまでは、強心薬(ジギタリス)を用いてポンプ機能を強め、利尿薬によって負荷を軽くする、というやり方でした。 しかしこの方法では、一時的には症状が改善されるものの、予後を延長できないことが分かり、血管を拡張する薬とベータ遮断薬を併用する方法に変わりました。 強心薬で心臓を鞭打つよりも心臓を休めるほうが、予後がいいと分かったわけです。 非薬物療法 一般に、薬物療法が充分な効果を上げない場合、非薬物療法が検討されます。 CRTの原理は次のようなものです。 正常な状態では、右室と左室と両室を隔てる中隔は同時に収縮するのですが、左脚ブロックが起こると、それらが時機のばらつく協調性のない収縮をし、送り出す血液量がさらに低下します。 そこで、右室と左室の側壁に、冠状静脈(心臓の表面を走る静脈)を経由して左室を挟み込むようにリードを留置し、電気信号を同時に流して拍動が同期するようにするのです(これを両室同期ペーシングと言います) (図4)。 こうすると、拡張期には、拡張気圧が上昇することで冠動脈への血流が増加して心筋への酸素の供給が増え、収縮期には、バルーンに吸引される形となって左室からの血液の送り出しが楽になります (図5)。 図5 PCPS(経皮的心肺補助法) 大腿動脈と大腿静脈のそれぞれに、経皮的に(体の表面から)送血・脱血カテーテルを挿入し、人工心肺装置で血液を体外循環させる方法です。 カテーテルを大腿静脈から右房まで挿入して抜いた血を、人工肺で酸素化し、遠心ポンプで大腿動脈に送り込みます。 (図6) 図6 VAD(補助人工心臓) IABPやPCPSなどの補助循環治療を行なっても効果のない重症患者で、心臓移植の適応がある人の場合は、移植までのつなぎとして補助人工心臓を使います。 体外型と植込型があります。 日本では、移植後の5年生存率は91%、10年生存率は89%です。 食事療法 うっ血性心不全では、食事制限が重要です。 特に塩分の制限が求められます。 塩分を摂りすぎると体内の血液量が増え、心臓に負担をかけることになるからです。 摂取は1日6グラム以下に抑えましょう。 肥満により心臓に負担のかかっている人は、カロリーの制限が求められます。 動物性脂をなるべく避け、植物性脂を摂るようにしましょう。 過剰な水分の摂取も控えましょう。 コーヒーなどの刺激物や大量飲酒も避け、禁煙しましょう。 また、運動不足や肥満はリスク要因です。 過度の運動は心不全を悪化させますが、過剰な運動制限も循環調節力を衰えさせます。 状態に合わせた運動を行ないましょう。 1日に20~30分程度の有酸素運動(ウォーキングなどの息の切れない軽い運動)が望まれます。

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